第20回 恒河沙展  講評  書道58巻  麻生記


20年の歳月というものは、実に重みのあるもので、スタートまもない頃は、
書が好きで、「書とは?」「その在り方とは?」といった難しいことは抜きに
して楽しんで、書くことが主導する田端推雲の在り方の秘密がそこにある
ようだが、これは正に「堪えて待つ」の境地にある。

 会場には、遅々としながらも追い続けた個々の課題作が、展示されて
誇らし気である。主宰者田端推雲の労苦が報われた第20回展といえよう。

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田端推雲主宰 「曲江・杜甫の詩」2×8

自在なる行書作は闊達にして、その才筆振りをいかんなく窺わせる。その腕前
は行くとして可ならざるなく、しかも個性ゆたかである。
濃淡の墨の使い分け、各書体から調和体までの自在ぶりであるが、本領は
漢字作にある。
「月明不借蘆花白」の高い境地を窺わせる。

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古城麗江 「大順」
気迫満々の筆、金文の構成美を筆意で現代の表現に。                  

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小野崎香苗 「蜀素帖・米芾」
3×8の大作に味わいを見せながら雰囲気をつかんでいる。

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筒木忍「美人薫氏誌名」
努力作である。書線、字形など更に研究を進めたいものである。

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前田文
「道造の詩」
技法でなく、心で書いた書というべきか。詩への愛着の深さが感じられるのだ。
屈託なし。

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山内光「臨・十七帖」
筆意ハエたるも、絵本に今一つの硬さを残しているのが、今後の研究課題。
進捗著し。

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柳瀬佐代子「臨・温泉銘」                                      
淡々として運筆に20年の成果を込めた誠に充実した作品である。
書の進展は教わる姿勢から、自ら積極的な学書の姿勢に移るところにある。

                                                    以上








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